今回は、以前のブログの続編として、会社設立時に悩むことの多い、会社の役員給与についてお伝えします。
目次
1.役員給与の損金算入の条件
2.役員の範囲
3.定期同額給与の条件
4.期中改定が認められる場合
1と2については、
8月1日のブログでお伝えしました。
今日は3の「定期同額給与の条件」と4の「期中改定が認められる場合」についてお伝えします。
3.定期同額給与の条件
法人の役員給与として損金算入できるのは、以下の3パターンであると申し上げました。
A.定期同額給与
B.事前確定届出給与
C.利益連動給与
Bの「事前確定届出給与」もやってやれないことはないが、手続き・条件が面倒で、Cの「利益連動給与」にいたっては、中小企業では要件が厳しすぎて、採用は到底、無理です。
したがって、従来どおりの制度であるAの「定期同額給与」が相変わらず多くの中小企業で採用されてます。
では、「定期同額給与」とは、どういうことを指すのでしょうか。
定期同額給与とは、「その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与」ということです。
簡単に言えば、一月50万円を毎月支払う、というような給与形態のことです。
ところで、会社の資金繰り上、役員の給与を一時的に未払いにする、ということは中小企業ではよくありますよね。
今月7月は資金繰りが厳しいから、8月に7月分と8月分を合わせて支給する、というように。
これに関しては、法令の規定においては、「各支給時期における支給額」が役員給与として債務として確定されているならば、「支払った」金額ではなく、「支給すべき」金額が役員給与とされています。
つまり、必ずしも実際の支払いが要件とされるわけではなく、経理上で支給すべき時期・金額が明らかであるならば、「定期同額給与」として損金参入はOKです。
4.期中改定が認められる場合
定期同額給与でも、会計期間中の金額の改定は可能です。
それは、以下の3パターンに限られます。
A.通常改定
B.臨時改定事由による改定
C.業績悪化改定事由による改定
Aの「通常改定」とは、会計期間開始の日から3か月経過日までにする改定です。
株主総会、取締役会などで役員給与の金額改定が決議されることを想定しています。
Bの「臨時改定事由による改定」とは、役員の職制上の地位の変更、その役員の職務内容の重大な変更等をいっています。
例えば、代表取締役の急逝により取締役が代表取締役に就任し、職務内容に重大な変更が生じたケースや、組織再編に伴い今までの使用人兼務役員が専務取締役に昇格したケースなどです。
ただ、職制上の地位や職務内容の変更があれば、無条件に期中改定が認められるわけではありません。
そういう大きな変更は通常は会計期間開始後3カ月以内の株主総会等で決められるのが普通ですから、3カ月経過後に行われたやむを得ない事情が存在する大きな変更に限定されます。
Cの「業績悪化改定事由による改定」とは、法令によれば「経営の状態が著しく悪化したことその他これに類する理由」によるものです。
気をつけていただきたいのは、ここでいう経営悪化とは、単に会社の一時的な資金繰りが悪くなったとか、業績が目標値に達しなくなったとか、財務諸表の数値が悪化したとかのでは、理由にならないということです。
第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、以下のa、b、cのような事情がないと、「業績悪化改定事由による改定」が認められる、経営の著しい悪化とはいえません。
a.株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与を減額せざるを得ない場合。
b.取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュール交渉において、役員給与を減額せざるを得ない場合。
c.取引先等の利害関係者からの信用を維持確保する必要から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の減額が盛り込まれた場合。
要は、利害関係者との関係上、役員給与の減額が必至、という具体的・客観的状況がないとダメだということです。
役員給与の期中改定に関しては、複数回の改定の是非とか、遡及増額の是非とか、ここではとても書ききれないほどの注意点がありますし、ここで述べているのはあくまでも一般論です。
個別的な疑問点やご不明な点は、お知り合いの税理士等にご相談されることをお勧めします。
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