こんにちは。税理士の山内です。
今回は、創業・起業にあたり、法人と個人事業とどちらを選ぶかという問題についてお伝えします。
6月5日付けのブログ「会社設立のメリット・デメリット」でご説明しましたように、創業にあたっては、個人事業主でのスタート、法人でのスタート、それぞれにメリット・デメリットがあります。
(
6月5日のブログのアーカイブはこちらから。)
肝心なのは、創業者それぞれが置かれている業種や状況、考え方によって判断すべきことで、一律的にどちらが有利とはいえないということです。
(どうしても迷っていならば、個人事業主として始めるほうが無難でしょう。)
ところがここにきて、少し状況が変化しつつあることをお伝えします。
ずばり、税金に限った話ですが、個人事業よりも法人のほうが、税金面でのメリットが(少しばかり)増えるかもしれません。
今日(7月7日)の新聞等の報道によれば、7月6日に菅直人首相が所得税の最高税率の引き上げの検討を示唆しました。
これは、所得の多い人ほど負担割合を大きくするという、所得税の累進性の強化を意味します。
課税所得が1800万円超の場合の税率40%が最高の税率なのですが、報道によれば、この最高税率40%の最高税率を引き上げるという案が浮上しています。
課税所得1800万円超の層だけを増税するわけには行きませんから、1800万円以下の層を含め、相対的に高所得層の税率をアップし、従来よりも税率の累進性を高くすることになるでしょう。
(あくまでも首相発言が実現されればの話ですが。)
この所得税の最高税率引き上げ案は、消費税の税率アップに伴う低所得者層への負担増の見返りという面もあるのでしょう。
(消費税は、低所得者ほど負担が多いという「逆進性」ある税制といわれています。)
一方で、法人税率の引き下げは、与野党を問わず、既定の路線となりつつあります。
菅首相の6日の発言でも、法人税率の引き下げを示唆しています。
法人税率に関しては、国際的な引き下げ競争にさらされているので、今後とも下がることはあっても、上がることはないでしょう。
(ただ、財政立直しのために止むに止まれず、見せかけ的に税率は触らず、課税ベースの見直しによって法人税収を大きくしようとする可能性はあり得ます。)
個人事業主の場合は、単純な話、売上から経費を差引いた利益から、扶養控除などのもろもろの所得控除を差引いた金額、それが課税所得となり、これに所得税率を掛けます。
ですから、所得税率のアップはストレートに個人事業主の懐に影響するわけです。
法人の場合は、売上げから経費を差引いて利益を計算するという点では同じですが、この経費の中には、法人から社長自身への役員報酬が含まれます。
この役員報酬は、社長から見れば給与所得で、所得税の対象となります。
ですから、所得税率のアップは法人の経営者にとって無関係とはいえません。
しかし、法人の場合は、会社の利益と、社長の役員報酬による所得とを両睨みして、うまく節税を図ろうと思えば可能です。
もし、前述のように、所得税の累進性が高くなり、法人税率が低いままならば、あえて社長への役員報酬は低くして所得税を少なくし、会社に利益を残して低い税率の法人税を払い、トータルでの節税を図るということ動きが加速されそうです。
(ただ、役員報酬は一般の従業員の給料と違い、年度の途中で役員報酬額を上げたり下げたり、勝手にはできません。役員報酬の変更は、しかるべき手続きとタイミングが必要です。)
一般的に、法人は、個人事業主に比べて、節税のためのオプション(選択肢)が多いといえます。
その上、前述のように、所得税の累進性アップ、法人税の引き下げが実現されれば、法人か個人事業かのメリット・デメリットの比較の上では、少なくとも税金面で、法人のメリットが少しばかり多くなるような気がします。
ただ、クドいことを繰り返しますが、事業経営においては、所得税・法人税だけを考えていればいいわけではなく、税金面では、他に消費税や地方税の均等割のこともあったり、税金以外の面では、例えば諸経費や事務処理負担のことなど、いろいろ考える必要があります。
法人化するかどうかの判断は、総合的・長期的視野で考えていただきたいです。
くれぐれも、所得税率が上がっただの、法人税率が下がっただの、そういうことだけで踊らされないでくださいね。
(なお、税制改正の方向性はそのときどきの政治・社会情勢で左右されるので、今の時点での税率引上げ・引下げは憶測に過ぎないことはいうまでもないでしょう。)
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税理士・山内司 / 山内会計事務所 【石川県金沢市】〒 920-0993 金沢市下本多町6番丁40-1
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